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書簡

太陽の読書記録

2024'04.20.Sat
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2005'10.28.Fri



辻村深月:著
ジャンル:現代ミステリー
好き度:5

<あらすじ>
学部生を対象に行われた論文コンクール。最優秀者はアメリカへ留学できる。
その最有力候補と思われていた、秀才型の狐塚と天才型の浅葱。
狐塚を追って上京した月子と、狐塚の同居人恭司。
2人が見守る中、誰もが予想していない結果がまっていた…

過去から生まれた歪み、孤独、秘めた想い、叶わない願い…様々な思いは交錯してすれ違っていく…
哀しい殺人ゲームのすえに導かれる真実とは…


<感想>
どう書いたら良いか分からないのですが、心地よい敗北感…といった心境です。
以下、基本的にかなり核心をついたネタバレなので、続き↓に

月子の苗字が1回も出てきてないのは怪しいな…とは思ってたんです。
でもまさか、そういうことだったとは予想だにしてませんでした。
(θが「川」を指定した時に「もしや月子の苗字は”川”がつくんだろうか…」なんて的はずれな心配はしましたが)
真実が明らかになったときは、浅葱と一緒に「嘘でしょ」と思わず言ってしまいました。
あとになって、思い返してみると、狐塚の態度って、一貫してたんですよね。そして、月子の態度も。

狐塚と浅葱だったら、初めのうちからずっと浅葱の方が好きだったのですが、浅葱の過去や、うちに秘めていた狐塚への嫉妬や焦りを知るにつけて、もうどうしようもないくらいに惹かれました。出し抜かれたiの論文に、誰よりも怒り、嫉妬を感じているというのに、それを表に出さないで、裏でひたすらiの姿を追っていた浅葱がたまらなく愛おしかったです。

『選ぶから。俺はお前を選ぶから。だからお願いだ、息をして。俺の全てを投げ出すから、誰か、お願いだから月子を助けて。』

『―――誰か、俺を殺して。俺の命を、こいつに返して。』

この辺は、本当に胸が引き裂かれそうでした。浅葱の気持ちも、月子の気持ちも、両方ともすごく切なくて痛い…

結局、月子も浅葱も2人とも消えてしまったんですよね…
月子は浅葱を守るために、浅葱は月子を助けるために、自分の命を投げ出した…
肉体としては、2人とも生きのびたけれど、月子が愛した「浅葱」という人格はもう二度と目覚めることはないし、その「浅葱」が愛した「月子」という記憶も、二度と戻らないのだと思います。

浅葱が二重人格なんだということは、途中あたりからなんとなく察していたのですが、ラスト、こうなってしまうとは思いもしませんでした。

エピローグの恭司も、浅葱なんだろうな…と思いながら読んでいたのですが、このあたりのやりとりもかなり切ないですね…
浅葱が月子に最後に言った台詞
「君が生きているというそれだけで、人生を投げずに、生きることに手を抜かずに済む人間が、この世の中のどこかにいるんだよ。不幸にならないで」
これは、浅葱が今はもういなくなってしまった「浅葱」の心を代弁して、消えてしまった過去の「月子」に向けて言った言葉だったのかも、と読み終えてからしばらくたってから、思いました。

月子も、浅葱も、消えてしまった2人の「月子」と「浅葱」の影を背負って、これからどうやって生きていくのか…辛いこともたくさんあると思う。それでも、浅葱のあのセリフは、これからの2人の生きる糧になるのではないかと思います。

浅葱にとっては、彼の兄が望んだ「月子」の生存、そして、その「月子」が望んだ「浅葱」の生存が、生きる力を与えてくれるだろうと思います。
月子にとって、自分の知らない自分が過去に存在していて、自分の知らない人が自分を知っている、その自分は自分であって、自分ではないというのは、辛いことも多いと思う。それはある意味、浅葱の中にいた藍の存在と一緒なんではないか。それを抱えて生きていくのはすごく大変なこと。でも、この言葉があれば、これから先、どんなに辛くても絶望に陥ったりしない…そう思います。


最後に、もう一つ思ったのが、浅葱が恭司として月子に会いに行ったことで、月子にとって、浅葱が恭司になってしまった。
ということは、恭司はきっとこの先もう月子に会えないんじゃないか…
浅葱は、二度と月子に会わない覚悟で月子に「恭司だ」と語ったけど、それはつまり恭司にとっても同じ事で…
恭司にとっても、月子の存在は大きいはずだったのに、月子のため、浅葱のためにそうした恭司の心境も、計り知れないほど切ないな…と思いました。


もう、この話、切ないところだらけだ!!でも、すごく、いろいろ考えさせられるすごい話でした。本当に、心地よい敗北感!

どうでもいいけど、長すぎ…
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すごく感動しました
この本にはすごく泣かされました。
この感想を読んで、また泣いてしまいました。
一生大事にしたいな、と思える本です。
たすく: 2007.08/02(Thu) 20:08 Edit
コメントありがとうございました。
たすくさん、初めまして。管理人の太陽です。
「子どもたち」は私も本当に出会えてよかったと思う作品の一つです。
読み終わった後の勢いにまかせて書きつづった感想にコメント頂けて嬉しかったですvありがとうございました。
2007/12/10(Thu)
切なくなる
私もいまさっき読み終えましたっ!
浅葱が月子を殴ってしまい、孤塚の妹と知ったところは、切なくて切なくて思わず泣いてしまいました(´;ω;`)
とってもいい話でした!
友達にも伝えたいです(-ω☆)キラリ

anywayこの小説長過ぎです。笑
リジー: 2013.05/01(Wed) 20:17 Edit
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