2005'10.28.Fri
辻村深月:著
ジャンル:現代ミステリー
好き度:5
<あらすじ>
学部生を対象に行われた論文コンクール。最優秀者はアメリカへ留学できる。
その最有力候補と思われていた、秀才型の狐塚と天才型の浅葱。
狐塚を追って上京した月子と、狐塚の同居人恭司。
2人が見守る中、誰もが予想していない結果がまっていた…
過去から生まれた歪み、孤独、秘めた想い、叶わない願い…様々な思いは交錯してすれ違っていく…
哀しい殺人ゲームのすえに導かれる真実とは…
<感想>
どう書いたら良いか分からないのですが、心地よい敗北感…といった心境です。
以下、基本的にかなり核心をついたネタバレなので、続き↓に
月子の苗字が1回も出てきてないのは怪しいな…とは思ってたんです。
でもまさか、そういうことだったとは予想だにしてませんでした。
(θが「川」を指定した時に「もしや月子の苗字は”川”がつくんだろうか…」なんて的はずれな心配はしましたが)
真実が明らかになったときは、浅葱と一緒に「嘘でしょ」と思わず言ってしまいました。
あとになって、思い返してみると、狐塚の態度って、一貫してたんですよね。そして、月子の態度も。
狐塚と浅葱だったら、初めのうちからずっと浅葱の方が好きだったのですが、浅葱の過去や、うちに秘めていた狐塚への嫉妬や焦りを知るにつけて、もうどうしようもないくらいに惹かれました。出し抜かれたiの論文に、誰よりも怒り、嫉妬を感じているというのに、それを表に出さないで、裏でひたすらiの姿を追っていた浅葱がたまらなく愛おしかったです。
『選ぶから。俺はお前を選ぶから。だからお願いだ、息をして。俺の全てを投げ出すから、誰か、お願いだから月子を助けて。』
『―――誰か、俺を殺して。俺の命を、こいつに返して。』
この辺は、本当に胸が引き裂かれそうでした。浅葱の気持ちも、月子の気持ちも、両方ともすごく切なくて痛い…
結局、月子も浅葱も2人とも消えてしまったんですよね…
月子は浅葱を守るために、浅葱は月子を助けるために、自分の命を投げ出した…
肉体としては、2人とも生きのびたけれど、月子が愛した「浅葱」という人格はもう二度と目覚めることはないし、その「浅葱」が愛した「月子」という記憶も、二度と戻らないのだと思います。
浅葱が二重人格なんだということは、途中あたりからなんとなく察していたのですが、ラスト、こうなってしまうとは思いもしませんでした。
エピローグの恭司も、浅葱なんだろうな…と思いながら読んでいたのですが、このあたりのやりとりもかなり切ないですね…
浅葱が月子に最後に言った台詞
「君が生きているというそれだけで、人生を投げずに、生きることに手を抜かずに済む人間が、この世の中のどこかにいるんだよ。不幸にならないで」
これは、浅葱が今はもういなくなってしまった「浅葱」の心を代弁して、消えてしまった過去の「月子」に向けて言った言葉だったのかも、と読み終えてからしばらくたってから、思いました。
月子も、浅葱も、消えてしまった2人の「月子」と「浅葱」の影を背負って、これからどうやって生きていくのか…辛いこともたくさんあると思う。それでも、浅葱のあのセリフは、これからの2人の生きる糧になるのではないかと思います。
浅葱にとっては、彼の兄が望んだ「月子」の生存、そして、その「月子」が望んだ「浅葱」の生存が、生きる力を与えてくれるだろうと思います。
月子にとって、自分の知らない自分が過去に存在していて、自分の知らない人が自分を知っている、その自分は自分であって、自分ではないというのは、辛いことも多いと思う。それはある意味、浅葱の中にいた藍の存在と一緒なんではないか。それを抱えて生きていくのはすごく大変なこと。でも、この言葉があれば、これから先、どんなに辛くても絶望に陥ったりしない…そう思います。
最後に、もう一つ思ったのが、浅葱が恭司として月子に会いに行ったことで、月子にとって、浅葱が恭司になってしまった。
ということは、恭司はきっとこの先もう月子に会えないんじゃないか…
浅葱は、二度と月子に会わない覚悟で月子に「恭司だ」と語ったけど、それはつまり恭司にとっても同じ事で…
恭司にとっても、月子の存在は大きいはずだったのに、月子のため、浅葱のためにそうした恭司の心境も、計り知れないほど切ないな…と思いました。
もう、この話、切ないところだらけだ!!でも、すごく、いろいろ考えさせられるすごい話でした。本当に、心地よい敗北感!
どうでもいいけど、長すぎ…
でもまさか、そういうことだったとは予想だにしてませんでした。
(θが「川」を指定した時に「もしや月子の苗字は”川”がつくんだろうか…」なんて的はずれな心配はしましたが)
真実が明らかになったときは、浅葱と一緒に「嘘でしょ」と思わず言ってしまいました。
あとになって、思い返してみると、狐塚の態度って、一貫してたんですよね。そして、月子の態度も。
狐塚と浅葱だったら、初めのうちからずっと浅葱の方が好きだったのですが、浅葱の過去や、うちに秘めていた狐塚への嫉妬や焦りを知るにつけて、もうどうしようもないくらいに惹かれました。出し抜かれたiの論文に、誰よりも怒り、嫉妬を感じているというのに、それを表に出さないで、裏でひたすらiの姿を追っていた浅葱がたまらなく愛おしかったです。
『選ぶから。俺はお前を選ぶから。だからお願いだ、息をして。俺の全てを投げ出すから、誰か、お願いだから月子を助けて。』
『―――誰か、俺を殺して。俺の命を、こいつに返して。』
この辺は、本当に胸が引き裂かれそうでした。浅葱の気持ちも、月子の気持ちも、両方ともすごく切なくて痛い…
結局、月子も浅葱も2人とも消えてしまったんですよね…
月子は浅葱を守るために、浅葱は月子を助けるために、自分の命を投げ出した…
肉体としては、2人とも生きのびたけれど、月子が愛した「浅葱」という人格はもう二度と目覚めることはないし、その「浅葱」が愛した「月子」という記憶も、二度と戻らないのだと思います。
浅葱が二重人格なんだということは、途中あたりからなんとなく察していたのですが、ラスト、こうなってしまうとは思いもしませんでした。
エピローグの恭司も、浅葱なんだろうな…と思いながら読んでいたのですが、このあたりのやりとりもかなり切ないですね…
浅葱が月子に最後に言った台詞
「君が生きているというそれだけで、人生を投げずに、生きることに手を抜かずに済む人間が、この世の中のどこかにいるんだよ。不幸にならないで」
これは、浅葱が今はもういなくなってしまった「浅葱」の心を代弁して、消えてしまった過去の「月子」に向けて言った言葉だったのかも、と読み終えてからしばらくたってから、思いました。
月子も、浅葱も、消えてしまった2人の「月子」と「浅葱」の影を背負って、これからどうやって生きていくのか…辛いこともたくさんあると思う。それでも、浅葱のあのセリフは、これからの2人の生きる糧になるのではないかと思います。
浅葱にとっては、彼の兄が望んだ「月子」の生存、そして、その「月子」が望んだ「浅葱」の生存が、生きる力を与えてくれるだろうと思います。
月子にとって、自分の知らない自分が過去に存在していて、自分の知らない人が自分を知っている、その自分は自分であって、自分ではないというのは、辛いことも多いと思う。それはある意味、浅葱の中にいた藍の存在と一緒なんではないか。それを抱えて生きていくのはすごく大変なこと。でも、この言葉があれば、これから先、どんなに辛くても絶望に陥ったりしない…そう思います。
最後に、もう一つ思ったのが、浅葱が恭司として月子に会いに行ったことで、月子にとって、浅葱が恭司になってしまった。
ということは、恭司はきっとこの先もう月子に会えないんじゃないか…
浅葱は、二度と月子に会わない覚悟で月子に「恭司だ」と語ったけど、それはつまり恭司にとっても同じ事で…
恭司にとっても、月子の存在は大きいはずだったのに、月子のため、浅葱のためにそうした恭司の心境も、計り知れないほど切ないな…と思いました。
もう、この話、切ないところだらけだ!!でも、すごく、いろいろ考えさせられるすごい話でした。本当に、心地よい敗北感!
どうでもいいけど、長すぎ…
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